「ユニバーシアード・IZMIR大会」
この夏、私は10数年前に選手として出場した経験があるユニバーシアード大会に、指導者になって初めてコーチとして派遣していただいた。非常に勉強になることが多かった。今頃になってしまったが、約2週間の遠征を振り返ってみたい。
まず特筆すべきは陸上の代表選手達はとてもまじめであったということ。これは他の競技団体に比べて際だっていた。競技種目を出して悪いが、女子サッカー代表は最悪だった。帰りの飛行機内でスチュワーデスさんの再三の注意を無視して、携帯で電話する始末。席が近ければ、間違いなくNatsuwayおばちゃんの雷が落ちていただろう。
よく陸連強化委員長の澤木先生が言っているが、スポーツ選手、とりわけ日の丸をつける選手の一挙手一投足は誰もが注目する。先に行われた世界陸上でも、為末選手の活躍に涙が出たのは私だけではないはず。誰からも応援され、祝福される選手こそ真のアスリートといえる。
話がそれたが、ユニバーシアードの陸上代表選手達はとても明るく、チームの輪を大切にしてくれた。また競技を取り組む姿勢もすばらしかった。彼らは、自分の大学ではどうだかわからないが、少なくとも「日本代表」であることの自覚を持って参加してくれたことは間違いない。
しかし、結果が出た者と出なかった者がいたのも事実である。
国際舞台で実力を発揮するのは難しい。異国の地で体調を崩す、怪我をしてしまう、ピットやトラック等の環境の変化に対応できない等、理由はさまざまだが、今大会で納得のいくパフォーマンスを発揮できた選手達の共通のキーワードは「国際経験」と「自己管理」だといえる。
「国際経験」はいくら豊富であってもダメな者はいつもダメである。結局、”経験”するだけでその後の修正がなされなければ意味がないからだ。海外ではいつも弱い、と言われる選手はもう少し頭を使う必要があるだろう。
「自己管理」については言うまでもない。国際大会にセルフコーチが付きっきりでいることは少ない。そこで、自分のその日の体調を鑑みて、トレーニングや食事を調整する能力があるかどうか、自己修正ができるか、ということだ。特に長距離選手は指導者に依存する傾向が強い為、良い時と悪い時の差が激しいのではないだろうか。
今回の大会開催地であるトルコは、国の情勢が不安定で毎日のようにテロが起こっていたらしく、練習や試合以外で選手村から出ることができなかった。このことは、選手たちの身体的・精神的コンディショニングに大きく影響したといえる。選手村での過ごし方に関して、私自身ももう少し選手たちに言及すべきだったと反省している。
悲しいことに、現在の日本の状況はどんなに競技力が高くとも、長距離以外の種目で大学を卒業しても競技を第一線で続けることができる選手は少ない。しかし、ユニバーシアード大会での彼らの活躍ぶりを見ると、まだまだ更に競技力が向上する可能性を大いに秘めている。今回のユニバーシアードに出場した選手達がこの経験を生かし、さらに競技を続ける環境に恵まれ、2007年の大阪の世界選手権、そして北京オリンピックに羽ばたいてくれることを願っている。