「アマチュアスポーツの原点-プッシュスケルトン選手権より-」
9月26日(日)に第4回日本プッシュスケルトン選手権が、長野のスパイラルで行われた。
ひょんなことから、「東京ボブスレー・リュージュ連盟」の事務局長になってしまった私は、体育学会に顔を出した後、初めて競技会に足を運んだ。
「東京ボブスレー・リュージュ連盟」とは、いわゆる「東京陸協」みたいなもんで、「日本ボブスレー・リュージュ連盟」を母体とした地域支部なのだが、なぜか東京・大阪・長野・宮城・北海道の5地域にしかない。
そして、ボブスレー・リュージュ連盟の中にはスケルトンもリュージュも含まれるのに、
どうして”日本そり競技連盟”じゃないの?と不思議に思うのは私だけではないはず・・・。いずれにしても、陸上競技とはずいぶん違うシステムで運営されている。
次にプッシュスケルトンの説明に入るが、スケルトン競技の始めの疾走部分のタイムを競うもので、氷のないこの時期にローラー付のスケルトンで、下りの傾斜にレールを引いたコースを滑走するという、なんとも子供の草スキーみたいな単純な競技なのである。(写真①)
さて、いよいよ本題。このプッシュスケルトン選手権には各地域の連盟に所属する希望者、男子27名、女子14名が出場した。(今年は過去最多だったらしい)
12名が出場した東京連盟の皆さんと、初めて顔を合わせた私はあまりにもみんなが普通の人だから驚いてしまった。学生、TVディレクター、会社員にフリーターという、なんともバラエティに飛んだ面々。(写真②)
そして、ふと横を見れば、ソルトレイク五輪入賞者・日本のスケルトン第一人者である越選手が、自らが持参した粗品を配っているではないか・・・。
『参加賞で~す。みんな、今日は頑張ろう!!!』(写真③④)
越選手も、もちろん選手として今大会に出場した。
参加費は1000円。当然、大会を運営する人たちは皆ボランティアである。
受付をし、その場でクジ引きをして滑走順を決める。(写真⑤)開会式の後、2本の練習滑走をしていよいよ競技開始。自分の番が来るまで、各自でUPをして待つのだ。
おりゃー、と声を上げ走り出していく人、思い通りの走りができず悔しがる人、自己記録が出て仲間と大喜びする人、越選手に教えてもらう人もいれば、次回の練習会を企画する集団もいる。
表彰式では全員が勝者をたたえる姿があり、そこには陸上競技とまったく同じアマチュアスポーツの醍醐味がみられた。(写真⑥)
しかし、思い出してほしい。ここにいる人たちのほとんどは、ウィークデーは普通に仕事をし、週末に長野に足を運んで練習するという、社会人であることを。
このような形で陸上競技を社会人になっても続ける人はどのくらいいるだろうか?
アテネ五輪で日本陸上陣が活躍できたのは、企業に支援をしてもらうという”日本が誇る実業団システム”の確立があってのことだろう。
しかし、一昔前は、陸上競技もスケルトン競技と同じ道を歩んでいたに違いない。
一人のスーパースターが誕生し、そこから競技人口が増え、裾野の広がりとともに競技レベルが向上し、それを支援する体制が整うことで世界が見えるようになるのだ。
日本のスケルトン競技は、現在越選手の活躍を契機に、裾野を広げている段階である。
今回プッシュスケルトン選手権のような試みを経て、近い将来世界の頂点に立つことを私は祈っている。
そしてまた、現在恵まれた環境で競技をしている陸上競技選手達も、アマチュアスポーツの原点に立ち返ることで、競技へのひたむきな姿勢を思い出し、社会人スポーツの楽しみ、喜びが蘇るだろう