「歴史的快挙」
第83回関東学生陸上競技対校選手権大会において、順天堂大学陸上競技部女子は、
82点を奪取し総合3位という快挙を成し遂げた。
”優勝したわけでもないのにおおげさな・・・”と思われるかも知れないが、14年前に共学に
なった順天堂大学にとって、これは画期的で意味深いことなのだ。
本学女子部員が関東インカレに初出場したのは、1991年の第70回大会である。
エントリー選手はわずか1名。私は怪我でエントリーすらできなかったが、出場した円盤投げの
北林さおりが2位に入り、順大女子の初得点を獲得した。 今大会では26名が17種目に出場し、12種目で入賞を果たし、うち9種目において表彰台に 上がったのである。
私は女子監督として、また順天堂大学陸上競技部の女子1期生として、涙が出るほど
嬉しい。
昔話は学生に嫌われるが、思い起こせば女子は1期生11名でスタートした。
当時監督の澤木先生が、世界で一番恐れられているかのような時代?であり、
男子校という独特の雰囲気の中で、私達は完全に「招かざる客」であったことは言うまでもない。
グランド内に立ち入ることも許されないような圧迫感の中、インターバルは突き刺さる視線にさらされながらどの試合よりも緊張して走り、JOGは印旛村の田園の中を逃げるように走ったことを今でも覚えている。
しかし、ある程度のことは覚悟して入学した1期生だけに、ひるまず、妥協せずに練習を続けたものである。4学年が揃ってからは、自立した女子部員になるべく、何度も話し合いを重ね、結束力を高めたものだった。
ありがたいことに現在でも、その伝統は受け継がれている。
4年生がリーダーシップを発揮し、陸上競技に賭ける同志が結集し切磋琢磨しあう精神は不動である。
関東インカレ前の日曜日、私は長距離で1人だけ練習をする選手がいたためグランドに顔を出した。
すると、誰もいないはずのグランドに、三段跳の選手が一人、ハンマー投の選手が 一人、
そしてインカレ選手ではない部員数人とトレーナーが黙々と練習をしていた。
それは全員女子部員であった。
競技力の良し悪しには「素質」が大きな因子となるが、学生アスリートレベルであれば
そんなものは関係ないのかもしれない。
仲間の存在、グランドの雰囲気、そして本人のやる気。
決して高校時代から競技力のある選手ばかりではなく、勧誘されて本学に来たわけでもない
女子部員達の努力する姿、もうすでに順位が確定していた最後のマイルリレーでの有志を
見ていると、今回の成績はまぐれであるはずがない。
順天堂大学陸上競技部女子の形を守り、女子部員全員が気合と執念でつかみとった、
『歴史的快挙』を素直に喜びたい。
歴史は伝統をつくり、伝統は継承されるものである。
私は、1段1段階段を上り、いつの日か頂上に立つ日が来ることを信じている。
女子部員諸君、本当におめでとう!!