魔法のインソール〜入谷先生に感謝を込めて〜
ランナーにとって、自分の足に合ったシューズを探すのは一苦労である。
私は学生時代、血マメができたり、いわゆる「爪が死んでしまう」状態が続いていた。
外反母趾の症状も出てきたため、トレーナーに相談したところ、「インソール(足底板)」
を作ることを勧められた。
そして出会ったのが入谷誠先生だった。
当時、大学病院内の理学療法室に勤務されていた先生を訪ねると、
「はい、歩いて。」「はい、前屈して。」「はい、歩いて。」と指示通り動く私の足を、
床に這いつくばって凝視し、「はい、わかった。」と汗だくになって繊細で丁寧な
作業を繰り返し、インソールが完成。
できたてのインソール入りシューズに足を入れた瞬間、「これは走れる」と思った。
驚く私を見て、「じゃ、頑張って!」と先生はいつも満面の笑みだった。
現役時代、自宅に泥棒が入り、干していたシューズを盗まれたことがあったが、
入谷先生のインソールは無事だったので、安堵したことを覚えている。
入谷先生のインソールは私の商売道具。この魔法のインソールのおかげで
私は走ることができた。
なんども微調整を繰り返したインソールは、もちろん今でも健在である。
先生が「足と歩きの研究所」を開設されてからも、大変にお世話になった。
選手を連れて行ったときは、インソールを作りながら、私が指導現場で思うことを
聞いてくれ、先生の率直な考えを示してくださった。
「全部書いたから。」と、著書「入谷式足底板」を頂いたとき、先生はインソールの
作成だけでなく、後進の育成にも心血を注いでいらっしゃることがよくわかった。
入谷先生との出会いが、私の競技人生、コーチ人生を変えたことは言うまでもない。
本当に感謝の気持ちしかない。
入谷先生、ありがとうございました。ゆっくりおやすみください。